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into the secret space

宇宙探偵アマネの冒険記

ブルー・ラーヴァ編 

1 ブルー・ラーヴァを追って


漆黒の宇宙空間を滑る流線形の小型船。機首の先に蒼く輝く惑星。

照り返しに船体がシルバーに光る。


小窓から中を覗く者がいたら驚くだろう。

全裸の美女が宙に浮いている…


アマネ。

上陸前の習慣の無重力ヨガ中。

一糸まとわずに揺蕩う、瞑想の時間。


扇のように広がる、

ふわふわの栗色の髪。

ミルク色の肌。

すんなり伸びた手脚。


胸とお尻が食べごろのフルーツのように実って、ウエストのくびれと軽く浮き出した腹筋とは少しミスマッチだ。


だが、もっとアンバランスなのは…

滑らかな腿の付け根から突き出した男性のシンボル。


ヨガのリラックス効果で、軽く元気になっている。


アマネは銀河世紀の男の娘。

両性の特徴を備えて生まれ、

成長すると、男性が女性になる。


だが、アマネは成人しても中性の状態が続いている。

最近、急激に女性化がすすみ

自分でも戸惑っているが、ペニス様の器官はそのまま。


宙に浮く肢体は、創造の神がふくみ笑いしながらつくったような、妖しい艶気に満ちている。

ヘテロセクシャルの男性でも、自らを埋めたくなるだろう…


窓に映る自分を見ながら、

しばし物思いにふけるアマネ。


「あと1時間で惑星タナへ到着」
ルゥの声で船内にアナウンスが流れる。


それまでは邪魔されないわけだ。
腕と脚を組み換え、誰にも見せられないようなポーズ。
滑らかな肌を軽く掌が這い、その感覚にうっとりするアマネ。


プライベートな時間はライトの点滅で破られた。
ビープ音。生体認証で開封する機密データだと報せている。
モニターに親指を押しあてるアマネ。


「指令変更?一体なに?」


宇宙の資源化には超光速航法が不可欠。
だが、膨大なエネルギーが要る。現在は小型宇宙船1機がせいぜいで、
巨大船や艦隊を動かせば国家規模の予算がかかってしまう。
そこで、にわかに脚光を浴びているのが、タナのブルー・ラーヴァだ。


健康用品扱いだった鉱物が、

新型エンジンの燃料に理想的な構成を持っていることがわかった。
先進国が買い付けが押し寄せ、価格は高騰中。
無許可の採掘は厳罰だがこれも後を絶たず、

星全体がゴールドラッシュの様相となっている。

新エネルギーの発見は毎年のこと、廃れるものもすくなくない。
鉱石学の博士号を持つアマネに、現地調査の命が下りた。
タナはかつてレジャーランドとして開発された星。
さびれた温泉地のような星で気軽な捜査も、わるくない。

だが、緊急指令はブルー・ラーヴァの軍事利用に関する内容だった。

「”セントラルゾーン”で調達できる物質と組み合わせることで、

核融合を起こすという。タナの埋蔵量なら、

惑星の1つや2つ簡単に粉砕できる恐るべき兵器になり得る。
事実なら、連盟が百年かけて築いた平和体制も危うい」

聞きなれたコールウェルの声が、硬い。
「すでに研究者チームが極秘に入国したという情報もある。

アマネ、君に緊急の潜入任務を与える。

装備と、詳細なデータや協力者に関する情報を送った。
…君がもし、敵に捕まってしまっても此方から出来ることはない。慎重に任務を進めてくれたまえ…以上だ」

緊張した表情でモニターのデータに目を走らせるアマネ。
最後のひとことにクスッとして
「おじいさまったら

…あいかわらず大昔のスパイ映画みたいなセリフが好きね」
ルゥの声が指令を引き継ぐ。言い出しづらい様だ。

「今回の潜入にはいつもより露出度の高い衣装で挑まれたし…だってさ」
「また?最近はお色気作戦ばっかりじゃない。

なに考えてるのかしら、あのおじいさんたち」
「今回の捜査は、娼館がスタート地点になるんだ。
“天使館”という施設の経営者が案内してくれる。ガルシアっていう男だね」
「娼館…ね。」

げんなりするアマネ。


ファルコン号はタナの宇宙港へ到着した。
外装は貨物船に偽装してあり、潜入の第一歩は成功の様だ。
 ファルコンのセキュリティをオンにすると、

アマネは装備を今一度確認する。

3Dトランスミッションで、一部隊を殲滅させられるような重火器と、
目を疑うような破廉恥な衣装が送られてきた。
「センスなさすぎ…置いてくわ」
武器は使い慣れたレイピアとデリンジャー。服はクローゼットから選び、
フード付きのマントをすっぽりかぶった。
「くれぐれも気を付けて。外は荒くれ者達であふれているから」

ハッチが開くと喧騒が耳に飛び込んでくる…